津軽三味線を弾くあなたの悩みや疑問に現役プロ奏者がお答えします。
津軽三味線の糸の叩き方についてです。1の糸を10の強さで叩くとすると、2の糸、3の糸はどれくらいの強さで叩くと良いでしょうか?曲目や個人差、流派、指導者によって違うと思いますが、おおよその目安を教えてください。
こちらの疑問はネットで見かけたものですが、同じように疑問に思っている方がいらっしゃるのではないかと思います。
では早速お答えしていきましょう。
津軽三味線の打ち撥は、叩き三味線の場合、撥先を皮に叩きつけるように撥を振って打ちます。
ここで3本の糸を打つ際の明確な差が存在します。
1の糸を打つ場合、撥先を皮につけるためには、2の糸、3の糸を撥で押していかなくてはなりません。
2の糸を打つ場合は、同様に3の糸を撥で押していかなくてはなりません。
3の糸を打つ場合は、他の糸には当たりようがないですね。
これが3本の糸を打つ(=叩く、撥付けする)際の明確な優劣になります。
他にも糸の太さ(線密度)や音の高さで変わる張力の影響があるのですが、厳密に書くためには高校物理の授業のようなややこしい話をしなければならなくなるのでここでは割愛します。。
質問の意図の通りに、3本の糸を叩く力の目安について、私なりの見解を示したいと思います。
1の糸の最強打を10として、3本の糸それぞれの通常打について考えてみました。
ここで言う通常打は、しっかりした撥付けをするのに最低限必要な力というイメージです。
(あくまで感覚的な数値です)
1の糸 最強打 ⇒ 10
1の糸 通常打 ⇒ 8
2の糸 通常打 ⇒ 6
3の糸 通常打 ⇒ 5
1の糸の通常打が8割程度の力具合に対し、2の糸が6割、3の糸が5割ほどの感覚で足りると思います。
あくまで上記に示したのは、しっかり打つのに最低限必要な力具合です。
例えば六段のような曲を弾く時に、「3の糸を打つ時は少し力を抜いて...」と区別するかと言えば、していません。
どの糸を叩く時も、同じくらいの力具合、つまり8割程度で叩いていることが多いです。
打つコツが掴めてくれば、1の糸を打つのが大変だということも感じなくなってきます。
そうなれば、どの糸を打つ時も同じ力具合の方が安定した撥付けができます。
という訳で、今日の疑問に対する答えは、
ここまで質問者さんの意図に沿って、"叩く力"という言葉を使ってきましたが、「津軽三味線は力ずくで叩く」というイメージがあるようで、その認識を変えることが良い撥付けをする上で一つのポイントになります。
力ずくというと、渾身の力を振り絞って、力任せに叩く、というようなニュアンスだと思いますが、撥を打つ時に終始手や手首、腕に力が入っていては連続して速い撥を打ち続けるのが難しくなりますし、何より手首を痛め腱鞘炎になる要因になりかねません。
津軽三味線は、糸を弾く音と皮を叩く音が合わさって、独特の音色を出します。
糸を弾(はじ)くのに力はほとんど必要ありません。
皮を叩く時に良い打撃音を出すために力が必要なのですが、力ずくで叩く訳ではありません。
撥を振る際の勢い(初速)と撥の重さを利用して皮に撥を当てます。
その際の衝撃に耐えるのに、撥をしっかり保持するために力を使うというのが本当のところです。
撥付けについては、また別の機会に詳しくお話しできたらと思ってます。
※流派や先生の考え方によって、見解が異なります。
フリーマガジン『海老名時間 vol.11』掲載♪
キャンペーンページ代表 / 講師
津軽三味線/民謡三味線歴 25年
2018年全日本津軽三味線競技大会デュオ部門 優勝
2019年津軽三味線世界大会唄付け伴奏A級(最上位部門)準優勝
2015年4月設立
6年間で100名超の指導実績